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「季刊・水俣支援」

東京水俣病を告発する会の会誌『季刊・水俣支援』に紹介の文章が掲載されます。

一人芝居「天の魚」の希望

昨年水俣病が公式発見から五〇年目を迎え、各所でこれを振り返る企画が立てられていた。しかし一方で、こうした一般的事実の反面、それぞれの人の生や記憶において、水俣病が余りに多様な場所を占めていることを感じ、気づかされる五〇年目でもあったように思う。これは例えば、昨春に結成された東京不知火座の関係者個々人において水俣病が占める場所に関しても同様に言えることだろう。つまり、主役の川島宏知と共に、この東京不知火座を切り盛りしていくのは、写真家や会社員、文学者、学生など職種を挙げるだけでも一様ではなく、それぞれが歩んできた道のりとその内にある水俣への思いは単純に同じものとは言えない。何よりも、現在大学院生である二十代中頃の私が、他の座員と同様の記憶をもつといったフリをすることも、水俣病に関する一般的な事実ですと、その場を離れて歴史を語ることも、事実としてはしばしばそうしてきたが、それでも多少の後ろめたさを感じてきた。ただ一方で、砂田明さんの思いを受け継ぎ、この東京という場所から自分達の「天の魚」を創ろうとする座員達の思いからは、皆の心がどこか同じ向きにあることを感じさせられ、私自身もその心の向きを気持ち良いと感じている。そして、こうした心の向きはきっと水俣に触れ、そして触れたいと思う多くの人達に共通したものなのだとも思う。その心の向きとは何だろうか。



こうした心の向きを考えるために、もう少し私が最近触れた出来事について書きたいと思う。ちょうど昨春に関西地方のある病院で、メチル水銀の影響が疑われる身体抹消の感覚障害がある、と診断されたばかりの方と知り合った。その方のご両親は不知火海沿岸地域の出身で、その方自身は関西地方で生まれ育っている。書くまでもないが、もちろん、こうした症例の方は、現行制度下では多くの場合すくいきれていない。そのような中、その方の言葉を色々と聴く中で、やはり一番自分の思い違いに気づかされたことは、その方自身にとって今年は水俣病公式発見五十一年目ではなく、一年目だという事実だ。その方の生において水俣病が占める場所は大変個人的なものだろうし、そもそも水俣病はその方の人生の、その方にとっての色彩を帯びているのだとも思う。また、日々の暮らしの大変さは本当のところ分からないから、だけれども、その苦しみの一端は私の日々の生活と結び付くと思うから、齟齬は拡がり続けるとしても、多少なりとも分かりたいと思う。そしてそうした中、その方が「天の魚」を観たい、と何度もおっしゃってくれることの重大さを噛み締める。何故観たいのだろうか。それを理解し尽くすことはできないけれど、その方の心もやはり、東京不知火座の面々と同じ方を向いているのではないかと思う。
 こんなことを考えながら、ふとした時に喉奥から踏み出る言葉は、石牟礼道子さんの次の句だ。

 祈るべき天と思えど天の病む

 かつて石牟礼さんの発案による不知火海学術調査団に参加した最首悟は次のようにこの句を解く。「救いはないと石牟礼道子は言っているかのようである。〔中略〕わからないのに、ぼーっと明かりがさしこむかのようである。ひょっとすると、すべては病むという意識は本来の、本源の区切りから発せられているのかもしれない。それは光であり、いのちなのかもしれない」(朝日新聞(夕刊)2004年6月5日 関西版)。天とは何だろうか。ここではある種の情況下で人が感じる何かしらとしておく。それは別の人の感じ方によっては、いのちであり、またはアニマや法、カミなどかもしれない。本来的にそれは超越的でありながら超越的でないものかもしれない。そして、それは時と場所を選ばず遍在しているかもしれない。そうした天すら病む時代、だが一方で厳然とした事実としてその天や、例えばいのちは日々の生活において続くことも認めなければならない。仮にこうした時代の希望は何かと問うたら、それはまさにこの続くという事実にこそ求められるかもしれない。例えば、江津野の老夫婦とそのお宝息子、そして、杢太郎少年の生活において、水俣病があると共に日々の生活、そこにある天やいのちは続くのだ。「天の魚」主役、川島宏知を初めとして東京不知火座の面々の、私が出会った大阪に暮らす方の、そして、水俣に触れ続ける多くの方々の、更には現勢に対して「せずにすめばありがたいのですが」と呟く誰もの心が向く方向には、もしかしたらこうした希望のあり方やありかがあるのかもしれない。こうした希望をつなぐ一輪になるために、本年九月の江戸川区船堀での「天の魚」本公演に私は急いで加勢しようと思う。

丹波博紀(大学院生)


メディアでの紹介 | コメント(0) | トラックバック(0)2007/07/12(木)15:26

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